OMO(Online Merges with Offline)は、オンラインとオフラインを融合させ、顧客体験を向上させるマーケティング手法です。
近年、中国をはじめとする海外市場で注目される一方、日本でも多くの企業が積極的に導入し、その効果が明らかになりつつあります。
本記事では、国内で成功したOMOの施策を10例紹介し、それぞれの成功ポイントを解説します。
また、記事の後半ではOMO戦略を実施する際にECサイトなどで役立つ機能を搭載した「GENIEE SEARCH」を紹介します。
ここでは、企業がOMOに取り組んだ結果成功した事例10選を紹介します。
・株式会社セブン&アイ・ホールディングス ・日本マクドナルドホールディングス株式会社 ・サントリー食品インターナショナル株式会社 ・株式会社そごう・西武 ・株式会社ニトリ ・株式会社インターメスティック ・株式会社ビームスホールディングス ・株式会社シップス ・Amazon.com,Inc ・Alibaba Group Holding Limited |
セブン&アイグループは、多業態グループ経営を推進し、国内に約22,500店舗を展開しています。
デジタル活用を重要戦略に掲げ、POSデータ、電子マネー(nanaco)、ECサイト(オムニ7)などから顧客情報を収集してきましたが、それらのデータの連携が課題でした。
そこで、新たにグループ共通ID「7iD」を導入し、7iD内で顧客情報を統合してCRM戦略を強化しました。
また、7iDに紐付くロイヤリティプログラム「セブンマイルプログラム」を展開し、顧客の購買行動を多角的な分析を行いました。得られた分析結果をもとに、顧客一人ひとりにパーソナライズされたサービスを提供し、グループ内での買い回りを促進しています。
大手ファストフードチェーンであるマクドナルドは、事前に注文した商品を店舗で受け取れる「モバイルオーダー」サービスを導入しています。
このサービスにより、顧客は事前にフードやドリンクを注文しスムーズに受け取れるため、待ち時間を大幅に短縮できます。
また、企業側も列の混雑緩和やレジスタッフの人員削減など運用面でのメリットが生まれています。
モバイルオーダーの流れは以下です。
モバイルオーダーの流れ |
1. アプリで商品を受け取る店舗を選んだ後、注文する商品を選ぶ 2. 受け取り・支払い方法を選ぶ 3. 店舗に着いたらアプリで「商品を受け取る」ボタンをタップして受け取る |
受け取りの方法は対面だけでなく、駐車場・ドライブスルー・席(一部店舗のみ)での受け取りから選択できます。
サントリー食品インターナショナルは、国内のみならず世界中のさまざまな地域で清涼飲料の製造・販売を行っている企業です。
OMOの取り組みとして、「TAG COFFEE STAN(D)」というサービスを展開し、オンラインで事前注文したコーヒーを店舗で受け取れる仕組みを提供しています。
TAG COFFEE STAN(D)では、顧客が味やラベルデザインを自分好みにカスタマイズしてオリジナルのコーヒーボトルを作れるサービスが特徴的です。
カスタマイズ性の高さにより、顧客は「自分らしさ」を表現できる商品を自ら生み出せる点で、顧客体験のパーソナライズ化を推進できています。
また、オンラインで注文した商品を好きなタイミングで受け取れるため、店舗での待ち時間を削減することができ、顧客体験も向上させています。
老舗百貨店であるそごう・西武は、新たな取り組みとして、メディア型OMOストア「CHOOSEBASE SHIBUYA(チューズベース シブヤ)」をオープンしました。
CHOOSEBASE SHIBUYAでは、顧客がオンライン上でカタログを閲覧しながら、非接触型のウォークスルー決済で多様なアイテムを購入できます。
CHOOSEBASE SHIBUYAが提供する新しい購買体験は、スマホを活用した従来の店員による対面接客に代わる環境構築で新しい購買体験を提供しています。
さらに、OMOの利点を最大限に活かして、店内で見た商品をオンライン上で再度確認・購入することができる点も特徴的です。
オフラインでの体験をオンラインに転用できるさまざまな仕組みにより、双方の利便性を両立させつつ、個々のニーズに合わせたシームレスな購買プロセスを実現しています。
ニトリでは、オンライン接客ツール「LiveCall(ライブコール)」を活用し、ビデオ通話を通じて自宅の様子を担当者に見せながらリフォームの相談ができるサービスを提供しています。
LiveCallは、ショールームが近くにない顧客や、忙しくて店舗に足を運ぶ時間が取れない顧客でも気軽に利用できるメリットがあります。
「LiveCall」を通じて提供されるオンライン接客では、担当者が顧客の自宅の空間に合わせたインテリアの提案が可能です。
担当者の具体的な提案により、顧客は自分の生活空間をより具体的にイメージしながら商品を選べるため、満足度の高い購買体験を得られます。
また、LiveCallでは、オンライン上でのカスタマイズ提案や商品の使用シミュレーションも行えるため、顧客がリフォームや家具選びにおいて感じる不安の軽減にも役立っています。
株式会社インターメスティックが運営しているメガネブランド「Zoff(ゾフ)」は、実店舗とECサイトの両方でメガネを販売しています。
実店舗で測定したメガネの度数データを顧客IDに紐づけて登録すると、顧客は自分に合った度付きメガネをECサイトでも手軽に購入できる仕組みを構築しています。
また、ECサイトでは顧客は以下のような購入方法が選択可能です。
Zoffが運営しているECサイトでの購入方法 |
◾️ レンズ交換券を使用して実店舗でレンズを入れる ◾️ 眼科で測定した度数を入力する ◾️ メガネ配送キットを利用して度数を確認する など |
顧客のニーズに合う選択肢を多数用意した結果、オンライン購入時の利便性が高まり、ECサイトでの離脱率低下を実現しています。
BEAMSは、OMO戦略の一環として実店舗とECサイトの顧客データベースを統合し、一元的な管理を実現しました。
データの一元化により、店舗のスタッフは顧客の購買履歴に基づいて以下のようなパーソナライズされた接客が可能となりました。
パーソナライズされた接客内容 |
◾️ オンラインで購入した商品に合う新しいアイテムの提案 ◾️ 過去の購入履歴をもとにしたコーディネートのアドバイス など |
店舗とECサイトから得られた顧客データの一元化により、より顧客が求めている提案を実施できるようになったのが、BEAMSにおけるOMO戦略の成功ポイントといえます。
SHIPSでは、店舗で在庫が欠品していた場合でも、ECサイトに在庫があればその場でオンライン注文を行い、店舗のレジで決済を完了させる仕組みを導入しています。
顧客は店頭で欲しい商品が手に入らない場合でも、スムーズにその場で注文を済ませられるようになり、顧客満足度の向上につながっています。
また、企業側にとっては欠品による機会損失を防ぐ手段としても効果的です。
さらに、SHIPSでは、公式サイトから気になる商品があれば一旦店舗に取り置きしてもらって、後日実際に店舗で試着してから購入を決められるサービスも提供しています。
試着してみたいという顧客のニーズに応えられるSHIPSのOMO戦略により、顧客の利便性が向上し、店舗とECサイトの双方で顧客体験の質を上げられています。
Amazonでは、レジのない実店舗「Amazon GO」を展開しています。
Amazon GOは、顧客が商品を手に取ると、その情報が自動的にアプリ上のカートに追加され、店外のゲートを通過する際にAmazonアカウントを通じて自動的に決済が行われます。
決済の自動化により、顧客はレジでの精算が不要で買い物を終えることができ、利便性が大幅に向上しているのが特長です。
また、企業側にとっても人件費の削減と運営効率の向上が実現できており、双方にとってメリットのあるOMO戦略となっています。
中国の大手EC企業アリババが展開するフーマーフレッシュでは、以下のOMO戦略による施策が実施されています。
フーマーフレッシュのOMO戦略 |
1. ECサイトと実店舗の双方で、会員は専用のアプリを利用して「アリペイ」で決済可能 2. ECサイトで注文した商品を最短で30分以内に届ける迅速な配達サービス 3. 商品のバーコードをスキャンして産地情報を確認できる 4. 購入した食材を店舗内で調理 |
フーマーフレッシュでは、「実店舗は食の安全性をアピールする場」と設定し、顧客が実際に実物を見たり触ったりできる場を設けて、ECサイトで注文しやすい環境を構築しています。
また、アリペイによる決済に集約することで顧客データを収集し、常に無駄のない在庫管理・マーケティングを目指しているのも特徴的です。
OMO戦略を実施するには、以下の施策の導入・採用が効果的です。ここでは、OMOの具体的な4つの施策について解説します。
1. チャットボット 2. モバイルペイメント 3. モバイルオーダー 4. オフラインとオンラインのデータ活用 |
チャットボットは、顧客からの質問に対してシステムが自動的に応答するツールで、顧客はリアルタイムで必要な情報を入手できます。
チャットボットで対応できる内容の例は以下です。
チャットボットの対応範囲 |
◾️ 商品の場所 ◾️ 在庫状況 ◾️ 営業時間 ◾️ 利用シーンに応じた商品の提案 など |
特に、実店舗にチャットボットを導入すれば、ショップ店員が常に側にいて接客しているかのような顧客体験を提供できます。
また、チャットボットは顧客の行動データを収集・分析する役割も果たしており、マーケティング・在庫管理などに役立つ情報を企業は得られます。
データを活用すれば、商品ラインナップの改善やサービスの向上に役立てられるため、OMO施策の効果を高められます。
モバイルペイメントは、スマートフォンなどのモバイル端末を利用した電子決済手段の中で代表的なものとしては、QRコード決済があげられます。
モバイルペイメントを導入すれば、顧客・企業双方に以下のメリットが得られます。
【顧客】 | 【企業】 |
・現金を使わずに簡単かつスムーズに支払いができる ・レジ前での混雑が軽減され、ストレスなくショッピングを楽しめる |
・決済に伴うデータが自動的に収集され、顧客の購買履歴や行動パターンの分析が可能 ・データの活用により、個々の顧客に対するパーソナライズされたサービスの提供を実現 ・店舗のレジ業務が効率化され、従業員の負担を軽減できる |
これらのように双方にとってメリットの大きいモバイルペイメントは、OMO施策における顧客体験と業務効率の両方を向上させる重要な要素となっています。
モバイルオーダーは、スマートフォンを利用して注文ができるシステムです。
顧客は混雑している時間帯でもレジに並ぶ必要がなくなり、待ち時間を大幅に削減できるため、導入により顧客体験の向上が期待できます。
一方で、企業側はモバイルオーダーにより顧客データを効率的に収集でき、データを活用した個々の顧客にパーソナライズされた商品提案やプロモーションを実施できます。
また、事前注文が可能なため、店舗のオペレーションが効率化され、ピーク時の混雑を緩和する施策としても有効です。
OMOの導入により、実店舗とECサイトの顧客データを一元的に管理して効果的に活用できます。
実店舗での購買履歴とオンラインでの行動データを照合すれば、顧客の興味関心や購買傾向をより正確に把握できるため、パーソナライズされた提案が可能です。
また、双方の顧客の購買データを基に、リアルタイムでの在庫管理や販促活動の最適化も実施できるため、販売機会の損失を防げるのもデータ活用の特長です。
OMO施策としてのデータ活用は、企業の競争力を高める重要な要素です。
OMO施策を成功させるためのポイントは以下です。ここでは、OMO導入の成功ポイントについて解説します。
・システムの不具合等を考慮した実行計画 ・サービス利用のハードルを下げる |
OMOを導入する際には、専用アプリやシステムにおける不具合のリスクを十分に考慮した実行計画が重要です。
特に決済システムに関しては、個人情報を扱うため、その安定性が非常に重要です。
開発期間を短縮したり、予算を絞りすぎたりすれば、システムに不具合が発生しやすくなるため、システム開発の際は緻密な計画を立て、慎重に進めていく必要があります。
また、予備システムやバックアップの導入を検討し、システム障害時にも顧客に対するサービスが途切れないような体制を構築するのも重要です。
開発段階から緻密な実行計画を立てれば、ローンチ後も顧客体験を損なわずにOMO施策の効果を最大限に引き出せます。
OMO施策を成功させるためには、サービス利用の物理的・心理的障壁を下げる対策が重要です。
専用アプリのインストール・一目で把握しづらいUIなどの顧客が利用開始時にストレスを感じる要素があると、結果的に利用者が増えづらくなります。
実際、専用アプリの利用者が思うように増加せず、サービスを終了せざるを得なかった企業も少なくありません。
サービスの終了を避けるためには、多くの人がすでに利用しているプラットフォームの活用が有効な手段です。
例えば、「LINE」を活用することで、利用者が新たにアプリをインストールする手間を省き、気軽にサービスの利用を開始できます。
さらに、サービス利用に対する初期コストや手続きの簡略化も重要なポイントです。
シンプルな手順で利用開始できる環境を整えれば、顧客の利用意欲を高め、サービスの定着率の向上も期待できます。
OMO導入の成功には、顧客にとって利用しやすい環境の提供が欠かせません。
OMO戦略に取り組んでいる企業で成功を収めているケースでは、いずれもオンラインとオフラインの融合が事業に即した上で円滑に進んでいる点が共通しています。
オンラインとオフライン双方が長所を活かしつつ短所を補完する仕組みが構築できれば、OMO戦略の成功が期待できます。
オンラインで商品を販売・宣伝する際に多くの企業で導入されているのが「ECサイト」です。
ECサイトは現代では気軽に立ち上げられるサービスもあり、取り組みやすい施策の一つですが、その分内部改善・改修を的確に行う必要があります。
ECサイトの改善・改修に役立つのが「GENIEE SEARCH」です。
GENIEE SEARCHは、サイト内検索改善ツールとしてECサイトの機能を以下の観点から改善・改修できます。
GENIEE SEARCHの改善項目 |
◾️ 検索ミスマッチを防止し離脱率を改善 ◾️ 商品ページへの導線強化でCV率を向上 ◾️ 購買行動に適した情報提供で売上増加 ◾️ ニーズを把握した効率的な運用を実現 |
これらの観点でECサイトを改善・改修できるGENIEE SEARCHの利用により、OMO戦略におけるオフラインへのシナジーも高められます。
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GENIEE SEARCH編集部
(X:@BST_hoshiko)
ECサイトや企業サイトにおける快適なユーザ体験を実現するための導線改善方法から、ECマーケティングの手法まで幅広く情報を発信しています。