レコメンドエンジンとは、ユーザの行動データやサイト運営者が決定したルールなどにもとづき、商品やコンテンツを提案する仕組みのことです。
活用すれば、購入率・顧客単価の向上や滞在時間を伸ばす効果があり、ECサイトの売上向上につながります。一方、商品数が少なかったり、ユーザデータが蓄積されていなかったりする場合には、有効な提案ができないようなケースもあります。
本記事のテーマは「レコメンドエンジンのデメリット」についてです。レコメンドエンジンの導入を検討しており、デメリットや課題について知りたい方はぜひ参考にしてください。
レコメンドエンジンとは、サイト運営者が定めたルールやアクセスしたユーザの閲覧・購入などの行動データにもとづき、コンテンツやアイテムを提案する機能のことです。
情報サイトやECサイトなどで活用されており、Amazonや楽天市場、Yahoo!ショッピングなどの大手ECサイトにも実装されています。ここからは、以下について詳しく解説します。
・レコメンドエンジンの仕組み ・レコメンドエンジンは売上向上につながる |
レコメンドエンジンと一言で言ってもさまざまな種類が存在し、各エンジンにより仕組みが異なります。
主に次のような5つの仕組みが存在します。
協調フィルタリング
サイト内での行動データを収集・分析し、各ユーザに合う商品などをおすすめするものです。
もっとも一般的な仕組みで、アイテムベースレコメンドとユーザベースレコメンドの2種類が存在します。
アイテムベースレコメンドは、特定の商品と一緒に購入されやすい商品を表示させる仕組みです。
例えば、プリンタを購入したユーザに対し、インクなどをおすすめします。
ユーザベースレコメンドは、対象のユーザと行動が似ているユーザが購入し、かつ対象のユーザが購入していない商品をおすすめするものです。
コンテンツベース・フィルタリング
ブランドやデザイン、色などの属性で、あらかじめグルーピングしたデータをもとに、類似商品をおすすめするものです。具体的には、あるコートを購入したユーザに対し、同じブランドや別ブランドでもデザイン・色が似ているコートをおすすめします。
商品属性でグルーピングをするため、高い購入率が期待できます。
ただ、商品数が多い場合は設定に手間がかかり、ユーザに対し新しい発見を提供できないデメリットもあります。
パーソナライズレコメンド
ユーザの閲覧や購入などのデータを分析し、各ユーザに合わせた商品をおすすめするものです。
サイト内の行動データだけでなく、年齢や性別、所在地などの属性データを組み合わせれば、より個々のユーザに合う商品の提案ができます。
協調フィルタリングと似ていますが、他人のデータは参考にせず、あくまで対象者本人のデータのみを分析しレコメンドを行います。
ルールベースレコメンド
「男性がアクセスした場合は、Aという商品を表示する」「11月から12月はクリスマス商品を表示する」などサイト運営者が決めたルールで商品をおすすめするものです。
また、バレンタインデーの広告から流入したユーザに対して、チョコやクッキー、花束などを表示するなどの条件設定もできます。
サイト運営者がルールを決められるため、期間限定商品やキャンペーン商品など、力を入れたいものを積極的にアピールすることが可能です。
一方で、自社が販売したい商品とユーザが求める商品がずれていた場合、効果を発揮しにくくなるデメリットもあります。
ハイブリッドレコメンド
これまで解説した複数の仕組みを利用し、商品やコンテンツをおすすめするものです。
各仕組みの弱みを補い強みを有効活用できるため、より高度なレコメンドが実現します。
アメリカに本社を置くNetflix社もハイブリッドレコメンドを採用しており、パーソナライズレコメンドやコンテンツベース・フィルタリングなどを組み合わせ活用しています。
≫≫ レコメンドエンジンとは?仕組みや機能・ツールを徹底比較
レコメンドエンジンは、リアル店舗における販売員の役割を担い、ECサイトなどにアクセスしたユーザに対し、おすすめの商品を提案してくれます。
ユーザにさまざまな商品を提案すれば、アップセルやクロスセルが狙え、顧客単価の向上が期待できます。
また、ECサイトに訪問するユーザは自分の欲しい商品が明確な人だけではありません。
中には、ウィンドーショッピング感覚でECサイトを閲覧しているユーザも存在し、そのユーザの関心がある商品を提案すれば、衝動買いなどを誘発し購入率を向上させられます。
さらに、インターネットでショッピングをするユーザは利便性を求めている方が多く、自分の欲しい商品が簡単に見つかることでユーザビリティが高まり、リピート率の向上や、ページ閲覧数・滞在時間の増加が期待できます。
レコメンドエンジンを効果的に活用すれば、顧客単価や購入率の向上、リピート・新規顧客の獲得が可能です。
売上向上が期待できるレコメンドエンジンですが、デメリットも存在します。
サイト立ち上げから間もない時点では、商品やコンテンツが少ないため、効果的なレコメンドができないケースがあります。
もちろん、サイトが大きくなるにつれ、ユーザにおすすめできる商品・コンテンツが増えていくため、レコメンドエンジンの効果を実感できることでしょう。
ここからは、特にサイト立ち上げ時に想定される以下のデメリットについて詳しく解説します。
・商品・コンテンツの数によっては効果を発揮しない ・精度はデータの蓄積量に依存する ・導入費用がかかる |
サイト立ち上げ当初で、商品やコンテンツの数が少ない状態だと、レコメンドエンジンが有効に働かないケースがあります。
商品やコンテンツ数が少なければ、ユーザに提案するものが偏り、最適な提案ができません。
一概にどの程度の数を用意すればよいかは販売する商品のジャンルなどにもよりますが、100商品程度が一つの目安です。
レコメンドエンジンの導入とともに、商品やコンテンツ数を増加させると効果的です。
協調フィルタリングやパーソナライズドレコメンドなどの、ユーザデータを分析し提案する仕組みを用いたレコメンドエンジンを利用する場合、データが少なければ精度の高いレコメンドは期待できません。
ただ、データが蓄積されれば、レコメンドの精度が高まりECサイトなどの売上向上に効果を発揮します。
蓄積されたデータが少ない場合は、コンテンツベース・フィルタリングやルールベースレコメンドなど、サイト運営者がルールを決める仕組みを活用するのがおすすめです。
レコメンドエンジンを導入する方法は以下があり、基本的にコストが発生します。
◾️|Word Pressを活用している場合はプラグインを活用する
◾️|ASP型のレコメンエンジンを導入する
◾️|オープンソース型のレコメンドエンジンを自社で開発する
導入に必要なコストには、システム費用のほか、導入してから定着するまでのコストも含まれます。導入して終わりではなく設定や効果を分析し、調整する必要があるため、設定や調整を行う担当者の手間やコストを見込んでおく必要があります。
一方で、、レコメンドエンジンを効果的に運用できれば、平均顧客単価が10%~20%増加した事例もあります。自社に合うレコメンドエンジンを導入できれば高い効果を発揮するため、費用対効果を含めた導入検討を行いましょう。
顧客単価や購入率を高め、滞在時間を伸ばすなどの効果があるレコメンドエンジンですが、導入を考える上でいくつかの課題もあります。
ここからは、レコメンドエンジンにおける以下の課題について解説します。
・個人情報保護の規制 ・ユーザ行動の変化 ・導入までのプロセス |
レコメンドエンジンにおける課題の1つ目は、個人情報保護の規制です。
有効なレコメンドを行うためには、ユーザ情報の収集・分析が欠かせません。
しかし、近年シークレットモードの活用やCookie情報の提供拒否などにより、個人情報を企業に渡さないという動きが進んでいます。
また、情報漏洩などの問題により個人情報の取り扱いに関する規制が強まっています。
2022年4月1日には改正個人情報保護法が施行され、以下のような点が変更されました。
◾️|本人の権利保護が強化
◾️|事業者の責務が追加
◾️|法令違反に対する罰則が強化 など
Googleからは2024年の年末までにサードパーティCookieを廃止すると発表されており、ユーザ情報収集の段階でレコメンド機能にも影響がでる法案が提出される可能性も頭に入れておくことが大切です。
レコメンドエンジンにおける課題の2つ目は、ユーザ行動の変化です。
消費者の行動や価値観は常に変化し続けており、インターネットなどの普及により、変化する速度も加速しています。
消費者の行動や価値観に対応し続けなければ、効果的なレコメンドができず、売上の向上につながりません。
ユーザの好みや行動をリアルタイムで分析し反映するレコメンドエンジンを導入するのが重要です。
また、コンテンツベース・フィルタリングやルールベースレコメンドなどを活用する場合は、定期的に効果を分析し、調整しなければなりません。
レコメンドエンジンにおける課題の3つ目は、導入までのプロセスです。
とくに自社で開発し導入する場合は、多くの期間とコストが発生します。
多数のエンジニアを抱え、資金力がある会社であれば自社開発も可能ですが、そうでなければ困難です。
レコメンドエンジンを導入するのであれば、ASPで開発・提供されているツールを利用するのがおすすめです。さまざまな機能が実装されているため、売上向上に貢献しやすく、コストを抑え活用できます。
また、ASP型のレコメンドエンジンであれば、導入後すぐに活用できスピーディに効果を発揮します。ASP型のレコメンドエンジンは複数あるため、導入するツールを選定する際は、導入目的から必要な機能を洗い出し自社に合うツールを検討しましょう。
レコメンドエンジンには、商品やコンテンツを提案するだけでなく、以下の機能が実装されています。
レコメンドエンジンの機能 | ||
データベース機能 | リマインド機能 | ランキング機能 |
メッセージ機能 | レポート機能 | ABテスト機能 |
自社の導入目的を明確にすることで、必要な機能が把握しやすくなります。また、スマートフォンに対応しているか否かも重要です。
近年は、スマートフォンの普及率が高くスマートフォンでWebサイトやECサイトを閲覧するユーザが増えています。
また、SNSやMAツールと連携できるレコメンドエンジンもありますので、自社が利用しているツールと連携できるかを確認することも重要です。
実際に、ASP型のレコメンドエンジンを導入し効果を出しているのが株式会社ジーニー社です。
株式会社ジーニー社では、採用サイトに「GENIEE SEARCH」のレコメンドオプションを導入しました。
ユーザが閲覧したコンテンツを分析し、以下のような関連コンテンツを表示させることでサイト内の回遊を促しています。
◾️|数字で見るGENIEE
◾️|事業紹介
◾️|事業紹介 – 広告プラットフォーム事業
◾️|GENIEE社内ツアー
◾️|社員インタビュー など
本記事では、レコメンドエンジンの概要やデメリット、課題について解説しました。
レコメンドエンジンとは、ユーザの行動データやサイト運営者が定めたルールにもとづき、商品やコンテンツを提案する仕組みのことです。
商品数が少なかったり、ユーザデータが蓄積されていなかったりすれば、効果を発揮できないなどのデメリットが存在します。
しかし、商品数を増やし、データの蓄積を進めるなど、継続的に運用を続けていけば、顧客単価や購入率の向上、新規・リピート顧客の獲得などさまざまなメリットがあります。
レコメンドエンジンを効果的に活用し、売上向上を目指してください。
GENIEE SEARCH編集部
(X:@BST_hoshiko)
ECサイトや企業サイトにおける快適なユーザ体験を実現するための導線改善方法から、ECマーケティングの手法まで幅広く情報を発信しています。