ECサイトの平均リピート率は30%〜40%程度です。
リピート率は、ECビジネスの収益性や持続可能性にとって重要な要素であるため、多くの企業がリピート率向上を目標としています。
本記事のテーマは「ECサイトのリピート率」です。
この記事を読めば、概要と計算方法、向上に向けた課題、向上のための6つの改善方法について理解を深められます。
ECサイトのリピート率を高め、売上や利益を向上させたい方は、ぜひ参考にしてください。
ECサイトにおけるリピート率(継続率)とは、同じ顧客が何度もサイトを訪れて商品を購入する割合を示す指標です。
一般的にリピート率が高いほど、顧客満足度が高いとされます。
昨今は、EC市場の拡大とともにECサイトの数が増加しています。
同じような商品を販売するサイトが多い中、新たな顧客を継続的に獲得することは簡単ではありません。
以下のような施策が必要で、手間やコストがかかります。
主なマーケティング施策 |
◾️|Web広告の出稿 ◾️|SEO対策 ◾️|コンテンツマーケティングの実施 ◾️|SNSの活用 |
また、必ずしも効果が得られるとは限らず、時間もかかります。
一方、一度購入した実績がある顧客をリピーターにすることができれば、ある程度の信頼関係が築けているため、新規よりもコストを抑え売上につなげることができます。
また、満足度の高いリピーターの口コミ発信は、新規顧客の獲得にも影響を与えます。
≫≫ ECマーケティングとマーケティングの違いとは?戦略で押さえるべきポイントを解説
≫≫ ECサイトの集客は難しい?効果的な5つの方法を徹底解説
リピート率は「一定期間におけるリピート顧客数÷累計新規顧客数×100」で求められます。ECサイトにおける平均リピート率は30%~40%程度といわれています。
ただ、以下の通り平均リピート率は業種により大きく異なります。
業種 | 平均リピート率 |
化粧品 | 約50% |
健康食品 | 約50% |
アパレル | 約35% |
食品・飲食 | 約40% |
インテリア | 25%~35%程度 |
旅行サービス | 約45% |
パソコン・家電 | 約25% |
自動車保険 | 約38% |
参考:actionlink
まず、自社ECサイトのリピート率と比較し、高いか低いかを確認してみましょう。
ECサイトのリピート率を向上させるには、以下の3つの課題があります。
ここからは、それぞれの課題について詳しく解説します。
・顧客満足度の維持 ・競合他社との差別化 ・リピート購買の促進 |
初回購入時に、顧客は期待を超えた満足度を得られなければ、リピートにはつながりません。
顧客満足度を向上・維持するため、商品・サービスの質や品ぞろえを増やすなどのとりくみは欠かせません。
また、ECサイトを利用するユーザには利便性を求める人が多く、操作性や視認性なども顧客満足度に影響を与えます。
万が一、顧客が不満を抱えクレームなどが発生した場合でも、誠実な対応をすれば信頼関係を築き、顧客満足を高められる可能性があります。
市場では多くのECサイトが乱立し、類似する商品が多数販売されています。競合他社との差別化ができなければ、リピート率は高まりません。
独自の価値提案や特典、顧客に合わせパーソナライズされたサービスの提供が重要です。
まずは販売する商品・サービスに関して、以下をチェックしましょう。
商品・サービスのチェック項目 |
◾️|他のリアル店舗・ECサイトなどで、自社と同じ商品を買える場所はないか ◾️|同じ商品が、より安価で買える場所はないか ◾️|同じ商品を、より便利に買える場所はないか |
差別化のポイントは、販売する商品だけではありません。例えば、サイトの使いやすさや延長保証などのサポートを充実させることで差をつけられます。
また、キャンペーンの実施やポイント還元、おまけ商品の提供なども有効です。
リピート率が高まらない課題の一つは、再購入を促すキャンペーンやPRの不足です。新規顧客がリピートしない多くの理由は「覚えていないから」です。
近年、人びとはインターネットやSNS、テレビなど多数のチャネルから、日々多くの情報を得ています。また、多忙な人も多く、購入した商品やサービスの記憶はあっても、購入したECサイトについて覚えている人は多くありません。
自社のECサイトを覚えておいてもらうため、顧客のニーズや状況を的確に分析・把握したメッセージの配信は効果的です。キャンペーン情報の発信などを行い、顧客と定期的なコミュニケーションを取りましょう。
リピート率の向上には以下6つの方法が効果的です。ここからは、それぞれの方法について詳しく解説します。
1. 顧客に価値ある体験を提供 2. リピート顧客向けの特典や割引を提供 3. パーソナライズされたサービスを提供 4. 定期的なリマインダーや情報提供 5. フィードバックを活用 6. コミュニティや会員制度を導入 |
リピート率の向上には、顧客への価値ある体験の提供が重要です。
サイトの使いやすさやスムーズな注文プロセス、的確なカスタマーサポートにより、顧客がストレスなく商品を購入できる環境を提供する必要があります。
どこをどのように操作するのかが分かりやすいサイトデザインでなければ、顧客が購入をせずにサイトを離脱する可能性があります。
また、複数の商品・サービスを取り扱うサイトでは、多くのユーザがサイト内検索機能を活用します。サイト内検索機能が実装されていなかったり、実装されていても精度が低かったりすると、購入・リピートは期待できません。
ユーザは必ずしも正しいブランド名や、商品名で検索できるとは限りません。
表記ゆれ対策が実装されていないサイト内検索では、検索結果が0件になりやすく、離脱の原因になります。
高精度なサイト内検索の実装で、ユーザが欲しい商品を見つけられるようサポートし、ユーザビリティを向上させることが重要です。
以下のようなカスタマーサポートを適切に行うことも、体験価値を左右する要素です。
カスタマーサポートの対応 |
◾️|クレームやトラブルへの対応 ◾️|チャットボットによるサポート ◾️|FAQページの充実化 ◾️|返品やキャンセル、配達状況の確認などの問い合わせ対応 |
≫≫ サイト内検索とは?3つのやり方・導入方法から活用事例までを解説
リピートの動機付けとなる特典や割引の提供も、多くの企業が採用している手法の一つです。
主に以下の方法が挙げられます。
項目 | 概要 |
ポイント付与 | 購入金額に応じてポイントを付与する方法です。以下のような大手ECショッピングモールも取り入れています。
・Amazon ポイントの付与により、次回購入時にポイントが利用できるECサイトを利用する可能性が高まります。ただし、ポイントの提供割合によって、利益率が下がるため注意が必要です。 |
クーポン配布 | 割引や付加サービスなどが受けられるクーポンを配布することで、お得感の演出や購入意欲の向上につながります。使用期限を設定すれば「利用しなければもったいない」と思わせる効果も期待できます。主な配布方法は以下です。
・購入後に次回利用できるクーポンを提供 |
ランク制度 | 購入金額や購入回数などでランクを付与し、そのランクに応じた特典を提供する方法です。リピートするほどランクが上がる仕組みを採用すれば、再購入の動機付けになります。ただし、管理が複雑になり手間がかかります。 |
限定セール | リピート顧客しか参加できないセールの開催や、送料無料キャンペーンなどを実施する方法です。 |
これらの施策は効果的な一方、実施する際は注意が必要です。
例えば、クーポン配布や、キャンペーンの開催を高頻度で行えば、利益率が下がります。
顧客からしても、定期的なクーポンの配布が見越せることから次回の配布やキャンペーンの開催を待ち、お得な買い物をしたい心理が発生する可能性もあります。
実施する際は特別感や季節感なども意識し、ワンパターンにならない工夫が欠かせません。
パーソナライズされたサービスの提供も有効です。
各顧客の期待や要望分析により、各顧客に合わせたサービスや情報を提供すれば、信頼性を高められます。
具体的には、顧客ごとにパーソナライズされたメールを送信するOne to One メールなどがあります。
また、レコメンドシステムの活用も効果的です。
レコメンドシステムでは、ユーザのサイト内行動や閲覧・購入などのデータ、事前に設定した一定のルールにもとづき、各ユーザに合わせた商品などを提案することができます。
Amazonなどの大手サイトはもちろん、Netflixといった動画配信サービスでも活用されています。
≫≫ レコメンドシステムとは?7種類のアルゴリズムと選び方を解説
前述の通り、リピートにつながらない大きな原因の一つは顧客から忘れられてしまうことです。
以下のようなリマインダーや情報提供により、定期的に顧客とコミュニケーションを取れば、リピート率が高まります。
商品・サービスのチェック項目 |
◾️|メルマガ ◾️|DM(ダイレクトメール) ◾️|SNSの活用 ◾️|LINE公式アカウントの活用 ◾️|ブログによる情報発信 |
それぞれにメリット・デメリットがあります。
例えば、メルマガであれば手軽に発信できる一方で、顧客に有益な情報を提供しなければ、すぐにブロック・購読解除されるリスクが小さくありません。
商品やサービスの宣伝だけでなく、バースデーメッセージや割引クーポンの配布など、内容・頻度に工夫が必要です。
印刷物を送付するDMはリアルに手元に届く分、目に留まる可能性は向上しますが、コストが高く届くまでに時間がかかります。
近年は、SNSやインターネットを活用し自ら情報収集するユーザも多いため、SNSやブログなどによる情報発信も効果的です。
≫≫ ECマーケティングとマーケティングの違いとは?戦略で押さえるべきポイントを解説
顧客からのフィードバック活用も欠かせません。
クレームを含めた顧客の声やレビューを積極的に収集し、問題点を分析すれば、提供する商品やサイトの改善に役立ちます。実際に利用した顧客の声は貴重なデータです。
レビューを投稿した場合、クーポンの配布やキャッシュバックを行うなどの施策を実施する企業も多数あります。
また、レビューを参考に買い物をするユーザは少なくありません。
キャプテラが調査発表したアンケート結果によれば、購入する際にもっとも信頼される情報源の一位がカスタマーレビュー・口コミ評価です。また、以下はマイボイスコムが調査・発表したデータです。
出典:【ネット上の口コミ情報に関する調査】|PR TIMES
上記によれば、商品・サービスなどを購入・利用する際、インターネット上の口コミ情報を「かなり参考にする」「まあ参考にする」ユーザの合計は増加傾向にあります。
商品・サービスの改善だけでなく、信頼の獲得にもレビューは欠かせません。
コミュニティや会員制度の導入も、リピート率の向上に効果的です。
コミュニティや会員制度があれば、顧客との定期的な接点が持ちやすくなり、顧客情報やフィードバックの収集にも役立ちます。
昨今は情報入力の手間や個人情報の問題から、会員登録を嫌がるユーザも少なくありません。会員登録が不要で利用できるECサイトも増えています。
情報入力をサポートするツールの導入や、ポイント・ランク制度、クーポン配布などの会員登録を促進する動機づけが大切です。
コミュニティでユーザ同士の交流を図り、顧客ロイヤルティを高めるコミュニティマーケティングも重要です。
これまでのマーケティング手法は、企業から顧客に対する情報発信で販売促進を行ってきましたが、コミュニティマーケティングは顧客の声を重視し、ロイヤリティ向上を図ります。
企業がコミュニティサイトを制作し、ユーザがコミュニケーションを取れる環境を整備するとともに、オフラインイベントを実施したりする施策です。
ただし、サイトの制作やイベントの実施は、コストや手間がかかるため、簡単ではありません。
まず手軽に取り組める施策として、InstagramやTikTok、XなどSNSのハッシュタグを活用し、コミュニティを形成する方法があります。「サイト名」「ブランド名」「商品名」「キャンペーン」などのハッシュタグを設け投稿を促せば、ユーザ同士のコミュニケーション発生が期待できます。
ECサイトのリピート率向上に向けた施策を実施している企業は少なくありません。
ここからは、ECサイトのリピート率向上に成功した以下の事例について詳しく解説します。
・Amazon ・Netflix ・ユニクロ ・無印良品 |
大手ショッピングモール型ECサイトを提供するAmazonでは、クーポンの提供やポイントの還元から会員制度、レコメンドシステムの実装など複数の取り組みを実施しています。
Amazonでは、多くの商品をすばやくリサーチでき利便性が高いため、利用するユーザが多く存在します。
動画配信サービスを運営するNetflixでは、レコメンドシステムを実装し、パーソナライズされたサービスを提供しています。
視聴した動画にもとづき、おすすめや関連動画を表示し、利用の促進と解約の防止につなげています。
また、ランキング表示機能を実装しているため、ユーザが人気の動画を簡単に確認可能です。
衣料品の販売メーカーであるユニクロでは、アプリをダウンロードしたユーザに対し、ダウンロード特典や誕生日特典でクーポンを発行しています。アプリダウンロードを促し、ユーザとの定期的な接点づくりで、リピート率向上に成功しています。
また、レビュー機能を実装しているため、ユーザのレビュー投稿を促すことも可能です。
衣服や生活雑貨、食品など幅広い商品を販売する無印良品では、会員制度に力を入れています。会員登録すれば、購入履歴の閲覧やお気に入りアイテムの保存が可能で、ユーザの利便性が向上します。
また、会員限定セールやポイント還元キャンペーンなどの特典も提供しており、リピートにつながっています。
この記事では、リピート率の概要と計算方法、向上に向けた課題、向上のための6つの改善方法について解説しました。
業種により異なりますが、ECサイトの平均リピート率は30%〜40%程度です。
リピート率の向上は、ECビジネスの収益性や持続可能性を高める上で欠かせません。
向上させるためには、他のECサイトと差別化を図るとともに、利便性の向上が効果的です。
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GENIEE SEARCH編集部
(X:@BST_hoshiko)
ECサイトや企業サイトにおける快適なユーザ体験を実現するための導線改善方法から、ECマーケティングの手法まで幅広く情報を発信しています。