レコメンドとは、特定のアイテムやコンテンツなどを個々のユーザに推薦することです。
販売促進や顧客満足度の向上を目的に、Webサイトにレコメンドの機能を導入する企業が少なくありません。
IT業界での利用をきっかけとし、ビジネスシーンや日常生活にも広く浸透しました。
本記事のテーマは「レコメンド」です。
この記事を読めば、概要やレコメンドエンジンの導入目的と仕組み、選び方についての理解が深まります。
詳しく知りたい方、レコメンドエンジンの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
レコメンドとは、特定の製品やサービス、コンテンツなどを個々のユーザ・顧客に推薦することです。英語の「recommend」に由来したカタカナ英語で、「おすすめ」や「推奨」という意味で使用されます。
recommendはラテン語で「強く勧める」という意味を持つ「recommendare」に由来しています。似た言葉に「リコメンド」がありますが、どちらも意味は変わりません。
両者ともにrecommendが元となっており、英語のネイティブな発音であれば「リコメンド」、ローマ字読みが「レコメンド」です。
ここからは、レコメンドに関する以下の点について詳しく解説します。
・レコメンドの意味 ・レコメンドが使われている背景 ・レコメンドと付随する用語 |
前述の通りレコメンドとは、顧客に対して特定のアイテムやコンテンツなどを推薦することを指します。
推薦にあたり、対象者の購買履歴や行動データ、個々の好みと興味関心を分析・活用するため、最適なアイテムの提案ができます。
さまざまなシーンで利用されており、例えば以下のようにECサイトで表示されるのは、レコメンド機能によるものです。
さまざまなサイトで見られるレコメンド |
◾️|この商品に関連する商品 ◾️|あなたにおすすめの商品 ◾️|ほかのお客様がよく閲覧している商品 ◾️|類似商品と比較する ◾️|この商品を買った人はこんな商品も買っています ◾️|無料配送になる関連商品 |
ECサイト以外にも利用されています。
利用されているアプリ・サービス |
動画配信サービス|SNS|マッチングアプリ|グルメアプリ|旅行サイト|診断コンテンツ|ニュースサイト|金融サイト|フィットネスアプリ|転職サービス |
レコメンドは顧客のニーズに応えるだけでなく、アイテムの販売促進や顧客満足度の向上にもつながる重要な手法です。
IT業界での利用をきっかけに、ビジネスシーンや日常生活にも浸透しました。
デジタル化の浸透で、多くの方がパソコンやスマートフォンなどのIT機器を利用しています。
従来のテレビCMや新聞・雑誌広告などのマスマーケティングから、インターネットを活用した能動的な情報収集が主流となりました。
利便性が高まった一方で、膨大な情報から自分自身が求めるものや、ニーズが明確になっていないが実は関心があるものの発見は困難です。
また、インターネットを利用する際に、個人の処理能力を上回った情報量に直面した時の状態である「情報過負荷」におちいる危険性もあります。
商品やサービスを購入する際、通常であれば選択肢が多い方が選択肢の幅が広がるため自分の理想とするものに遭遇する確率が高くなると考えがちです。
選択肢が少なければ、その少ない選択肢の中から意思決定をしなければなりません。
ただし、選択肢が多く情報過負荷におちいれば、意思決定ができなくなりストレスを感じるなど、購入決定に至る確率や購入時の満足度が低下します。
とくに、情報量が多いインターネットの利用は情報過負荷になる傾向が少なくありません。
自分の好みやニーズに合った商品・サービスを見つけやすくなるレコメンドの活用で、購買意欲や満足度を高める効果が期待でき、その結果、売上や利益の増加につながります。
レコメンドと付随する用語として、以下が挙げられます。
用語 | 概要 |
レコメンドエンジン | 各ユーザに合わせた製品やコンテンツを表示・提案する機能やソフトウェアのことです。あるアイテムに関連するほかの製品や、一緒に買われる頻度が高いもの、プロフィール・行動履歴などが似ているほかの利用者が購入したものを推奨表示する処理を行います。 |
レコメンドアイテム | 顧客におすすめしたい製品のことです。運営者が決めるパターンと、レコメンドエンジンなどで顧客データを分析し、決定するパターンがあります。 |
レコメンドシステム | ユーザのサイト内行動や閲覧・購入などのデータ、事前に設定した一定のルールをもとに、各利用者に合わせたアイテムなどを提案するシステムのことです。 |
≫≫ レコメンドエンジンとは?仕組みや機能・ツールを徹底比較
≫≫ レコメンドシステムとは?7種類のアルゴリズムと選び方を解説
マーケティングにおけるレコメンドエンジンとは、顧客の行動データや購買履歴などを分析し、その情報にもとづいて最適な製品・サービスを提示するツールのことです。
「自動推薦システム」と呼ばれるケースもあります。
企業と利用者の双方に利点があるデジタルマーケティングの手法で、2020年に定着しました。
レコメンドエンジンでは機械学習やアルゴリズムを活用し、顧客の好みや興味を予測した上で、その予測にもとづきパーソナライズされた提案を行います。
各利用者に最適なアイテムの提案や顧客体験の実現には「パーソナライゼーション」とも呼ばれる、レコメンドが欠かせません。近年はAIを活用するケースもあります。
レコメンドエンジンを導入すれば、顧客体験やビジネス成果の向上が期待できます。ここからは、レコメンドエンジンを導入する以下の目的について詳しく解説します。
・購買意欲の促進 ・顧客ロイヤルティの向上 ・収益の最大化 ・競争力の維持 |
レコメンドエンジンは、リアル店舗における販売員の役割を果たし、購入促進の効果があります。
利用者の行動や好みにもとづきパーソナライズされた提案を行うため、顧客が興味を持つ可能性の高い製品やサービスを提示可能です。
利用者は自分のニーズや好みに合ったアイテムやコンテンツを、より簡単に見つけられます。
膨大な商品の中から、自分に合うアイテムのリサーチは簡単ではありません。
例えば、ECサイトでスマートフォンと検索すれば、さまざまな種類のスマートフォンが見つかります。しかし、多くのスマートフォンを表示させても、利用者が本当に欲しいアイテムが見つかるとは限らず、購入に至らないケースも多いのが事実です。
レコメンドエンジンを活用すれば、利用者に合うアイテムを提案し、結果的に購入確率の向上が可能です。
また、偶発的消費やセレンディピティとも呼ばれる「思いがけない発見」にもつながります。
≫≫ レコメンドエンジンの機能とは?3つの実装方法から注意点までを解説
顧客のニーズに合った提案により、満足度の向上も期待できます。
インターネットで商品・サービスの購入や検索を行うユーザの多くは、利便性を重視しています。
また、昨今は画面が小さなスマートフォンを利用するユーザが少なくありません。スマートフォンでも欲しいアイテムが検索しやすくなければ、リピータの獲得は困難です。
ECサイトで売上を高めるためには、新規ユーザもしくはリピータの集客が不可欠です。
新規ユーザの獲得も重要ですが、得るためには広告の出稿やSEO対策などが必要で、コストがかかります。
一方で、リピータを獲得できれば低い集客コストで長期的に収益を得ることができます。
リピータ獲得には、利便性や信頼性を高め、ロイヤリティを向上させることが重要です。
レコメンドエンジンの中には、ECサイト上で製品を提案するだけでなく、メールやプッシュ通知などにより、おすすめアイテムを案内できるものもあります。
最適なタイミングでの案内や、アイテム提案の継続で、リピータ獲得やファンの育成が期待できます。
ECサイトの売上は、「訪問数×コンバージョン率×客単価」で算出されます。
前述の通り、レコメンドエンジンの活用でリピータ獲得による訪問数の向上が見込めます。
アイテムの提案で流入したユーザが複数ページの閲覧を行えば、滞在時間や回遊率が向上します。
滞在時間や回遊率の向上は、検索結果の順位にも影響を与えるため、新規ユーザを獲得しやすくなります。
また、ニーズが明確でない製品・サービスの提案で気づきを促すなど、購買意欲の促進・コンバージョン率向上に与える影響も小さくありません。
さらに、客単価の向上も見込めます。
レコメンドエンジンを使用すれば、顧客がすでに興味を示している商品やサービスに関連する、ほかのアイテムを提案可能です。例えば、ワークデスクを購入する利用者に対し、よく一緒に購入されているアイテムとして「デスクマット」「ワークチェア」「チェアマット」などを表示できます。
関連商品の提示で、ほかのアイテム購入を促しクロスセルが見込めます。
さらに、より高性能で高額なものの購入につなげるアップセルにも効果的です。
レコメンドエンジンの導入には、顧客体験の向上や売上増加などだけでなく、競合他社との差別化を図る効果もあります。
以下の代表的な大手ショッピングモールをはじめ、膨大な数のECサイトが存在します。
代表的な大手ショッピングモール |
Amazon|楽天市場|Yahoo!ショッピング|メルカリShops |
そのため、販売する製品が似ているECサイトも多く、差別化は簡単ではありません。レコメンドエンジンの利用で、顧客にとって魅力的な体験を提供し、市場での競争力を強化できます。
レコメンドエンジンには、提案する製品・サービスを決定するアルゴリズムが複数あります。
ここからは、主なアルゴリズムである以下の4つについて詳しく解説します。
・ルールベース ・協調フィルタリング ・コンテンツベース・フィルタリング ・ハイブリッド・タイプ |
ルールベースとは、流入元や累積スコアでのセグメントなど、サイト運営者が事前に定めたルールにもとづき、レコメンドするアルゴリズムです。
例えば、母の日キャンペーンの広告から流入したユーザに対し、花や人気のプレゼントを提案するなどが該当します。
また、スマートフォンを閲覧したユーザに対し、保護フィルムやケースを提案するなど、閲覧商品にもとづくルール設定も可能です。
特定のルールに一致するアイテムを利用者に表示し、個別のニーズや好みに応じた推薦ができます。
ただし、レコメンドの内容と顧客の嗜好にズレがあれば、成果につながりにくくなります。ABテストなどを実施し、PDCAサイクルを回し改善する必要があります。
協調フィルタリングは、レコメンドにおけるもっとも主流なアルゴリズムです。
ユーザが過去に閲覧・購入したアイテム情報をもとに、ほかユーザとの類似性やアイテム間の関係性を分析し、推薦します。
例えば、製品Aを閲覧・購入したユーザの中に、製品Bも閲覧・購入した方が多ければ、Aを閲覧・購入したユーザに対し、Bも提案します。
協調フィルタリングには、主に以下の2つのアプローチがあります。
アプローチ名 | 概要 |
アイテムベース | アイテム間の類似性を算出し、ユーザが好むと予測される、類似したものを推薦します。具体的には、ユーザが過去に閲覧・購入したアイテムのパターンをもとに、アイテム間の類似性を分析し、ターゲットユーザに対する推薦を行います。 |
ユーザーベース | 類似した嗜好を持つユーザをグループ化し、グループが好むアイテムを推薦します。具体的には、ユーザ行動や購買履歴の類似性を分析し、ターゲットに対する推薦を行います。 |
協調フィルタリングのアルゴリズムを利用すれば、ユーザに対して思いがけない商品の発見を演出できます。
対象のユーザと興味関心や好みが類似した方が閲覧・購入したアイテムであれば、対象者にもマッチする可能性が高くなります。また、自動でデータを収集・分析するため、一度導入してしまえば市場の変化にも対応しやすい特長があります。リソースがかかりにくく、導入しやすい点も魅力の一つです。
一方で、導入初期などのデータが少ない状態では、有効なレコメンドができません。「コールドスタート」と呼ばれ、必要な情報の蓄積が不十分であれば、適切なアイテム提案が困難です。
また、ECサイトに登録されているアイテムが少なければ、マッチ度の低い商品が繰り返し提案されるなど、不満につながるケースもあります。
コンテンツベース・フィルタリングは、アイテムやコンテンツの属性情報とユーザの好みをベースにするアルゴリズムです。
事前に以下のような情報をもとに、アイテムやコンテンツをグループ化し、対象者がどのグループに高い興味を持つかを分析します。
コンテンツベース・フィルタリングで参照される情報 |
ジャンル|ブランド|色|価格|出演者|メーカー |
例えば、動画配信サービスである俳優が出演したドラマや映画の視聴者に対し、同じ俳優が出演した作品を提案するなどが該当します。
グループ化するアイテムやコンテンツのルールは、運営者側で自由に決められ、ユーザの行動データが少なくてもレコメンド機能を活用可能です。
一方で、アイテムやコンテンツ数が膨大であれば、事前の属性解析や分類にかかる手間が少なくありません。
また、類似する商品ばかりが提案され、ユーザに新たな気づきを与えられないケースもあり、ユーザから、好みに合わない、つまらないとマイナスの印象を持たれるリスクがあります。
これまで解説したロジックを組み合わせた方法をハイブリッド・タイプと呼びます。複数ロジックの組み合わせにより、それぞれのデメリットを解消し、メリットを最大化できる手法です。
ハイブリッド・タイプは、AmaznonやNetflix、Alibabaなど、単一のロジックでは課題を解決できない企業で活用されています。
レコメンドエンジンは複数あり、特徴やメリット・デメリットなどが異なります。自社に合うものを選択・導入しなければ、期待する効果は得られません。
ここからは、導入する際の選び方について以下の流れで詳しく解説します。
・導入目的の明確化 ・ニーズに合った機能性があるか確認 ・費用対効果の比較 |
企業によってECサイトの課題や目的は異なるため、まずは自社の導入目的を明確にします。導入したレコメンドエンジンが、自社のビジネス目標やニーズに合わせてカスタマイズできなければ意味がありません。
売上の最大化や顧客の満足度向上など具体的な目標を定め、それをもとに必要な機能や適したアルゴリズムかを精査します。
自社ビジネスのニーズ・環境に合わせた機能や、レコメンドエンジンをカスタマイズできるかの判断が重要です。
アイテムやコンテンツの提案だけでなく、以下のような複数の機能が存在するため、必要な機能を備えたソリューションの選択が必要です。
機能名 | 概要 |
データベース | レコメンド機能の活用には、利用者データの蓄積や分析が欠かせません。具体的には、デモグラフィックや行動履歴、閲覧履歴データなどが必要です。データベース機能で、さまざまな情報を総合的に蓄積・分析し、ユーザの嗜好や興味を把握すれば、マーケティングにも役立ちます。 |
ランキング | 閲覧数や購入数が多いアイテムを表示する機能です。人気のある商品を表示し、利用者の購入を促します。 |
リマインド | 閲覧した商品やショッピングカートに入れたまま、購入に至っていないアイテムをリマインドする機能です。買い忘れの防止やかご落ち対策に役立ちます。 |
メッセージング | 利用者の好みに合うアイテム情報を提供する機能です。メッセージ内容は、対象者の行動履歴にもとづくおすすめ商品や、売れ筋商品のランキングなどさまざまです。全ての顧客に同一の内容を一斉送信するわけではないため、One to Oneなコミュニケーションができます。 |
レポート | レコメンドの成果を集計する機能です。提案したアイテムが購入されたケースと、されなかったケースなどの分析ができます。また、購入単価やコンバージョン率など、多面的な分析が可能なものもあります。 |
ABテスト | おすすめする商品を複数パターンで配信し、効果の高いものを表示する機能です。より成果の出やすい表示方法による配信が期待できます。 |
これらの機能とあわせて、柔軟性と拡張性を兼ね備えたソリューションの選択がおすすめです。また、自社が利用しているほかシステムとの連携可否の確認も重要です。システムとの連携が可能であれば、データの集約などが簡単で、業務改善などにも役立ちます。
さらに、メーカーのサポート体制の確認も欠かせません。初期設定や利用中のトラブル対応、質疑応答などのサポートを受けられれば、安心かつ効果的な活用ができます。
レコメンドエンジンの効果を定量的に評価する、費用対効果の比較も欠かせません。
効果を測定するための指標や方法を事前に定め、それにもとづく費用対効果を評価し、導入にかかったコストと比較したROI(投資収益率)を算出します。
ROIが高いほど導入の費用対効果は高いと言えます。
豊富な機能が実装されている場合、導入目的に対しオーバースペックで、費用対効果が悪くなるケースもあるため、注意が必要です。
レコメンドエンジンの料金体系は、ソリューションにより異なります。
例えば、アクセスやクリック数に連動する従量課金制や、毎月決まった利用料が発生するものなど、さまざまです。自社に適した料金体系の見極めも、高いROI実現に必要です。
この記事では、レコメンドの概要やレコメンドエンジンの導入目的と仕組み、選び方について解説しました。
レコメンドとは、特定のアイテムやコンテンツなどを個々のユーザに推薦することです。
多くのシーンで利用されており、ECサイトなどで活用すれば、以下の効果があります。
レコメンドを導入して得られる効果 |
◾️|購買意欲の促進 ◾️|顧客ロイヤルティの向上 ◾️|収益の最大化 ◾️|競争力の維持 |
レコメンドエンジンは複数ありますが、GENIEE RECOMMEND(ジーニーレコメンド)の利用がおすすめです。手軽に導入できるだけでなく、目的にあわせた柔軟な商品レコメンドが可能です。また、サイト内検索機能とのデータ連携も可能なため、ユーザの行動にあわせた的確なレコメンドでコンバージョン率の向上が期待できます。
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GENIEE SEARCH編集部
(X:@BST_hoshiko)
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