
登壇者:リンベル株式会社 執行役員 EC統括部 本部長 大川 和弘氏
導入サービス:GENIEE SEARCH for EC
導入先Webサイト:リンベルカタログギフト
生成AIの普及により、ユーザーは検索結果の中で“答え”を得て完結するようになり、オウンドメディアへの流入は確実に減少しています。こうした変化に直面したリンベルは、従来の導線設計を見直し、「顧客接点そのもの」を再構築。検索・CRM・ブランド発信を横断しながら、AI時代に適応した新たなEC戦略へと舵を切りました。
本記事は、リンベルのECを統括する大川氏をお招きし、リンベルの具体的な取り組みと成果についてお話しいただいたセミナーの内容をまとめたレポートです。“これからのECに求められる設計”とは何かを紐解きます。
リンベルのギフトECにおいて、集客の主軸はネット検索です。ギフトは「結婚」「出産」などのライフイベントが起点になりやすい一方、事業者側がそのタイミングを事前に把握するのは容易ではありません。だからこそ、ユーザー自らが探してWebサイトに流入するネット検索は、重要な顧客接点です。
しかし近年は、GoogleのAI Overviewの普及により検索結果の最上部にAIが情報を要約して表示され、ユーザーの検索行動がその場で完結する「ゼロクリック検索」が増加しています。そのため、リンベルでも、オウンドメディア経由のユーザー流入の大幅な減少が課題となっていました。
2025年の5〜7月のアクセス数は、前年同期間比で以下のように減少しています。
・スマートフォン:約56%減
・PC:約61%減
オウンドメディアへの流入が減ることで、オウンドメディア経由のECへの導線が通用しなくなるなか、リンベルは“ユーザー視点”を軸に顧客接点の再設計に踏み切りました。
リンベルは、検索経由のオウンドメディア流入の減少、及びECへの導線が機能しづらい課題を解決するため、次の3つの施策を提示しました。
1.オウンドメディアの方向転換:「Knowクエリ」から「Buyクエリ」へ
リンベルのオウンドメディアでは、これまでギフトマナーなど知識獲得を目的としたユーザーの検索ニーズを拾うコンテンツ「Knowクエリ」が中心でしたが、購買につながる「Buyクエリ」を意識した記事へリライトを進めました。
例えば、「用途×人気/おしゃれ/おすすめ」のように、用途と意思決定をセットにしたキーワードによる記事づくりです。
また、AI Overviewで表示される要約を見て“知って終わり”にならないよう、アンケート等でユーザーの実態調査を行い、「買いたくなる」情報へと磨きをかけました。
その結果、アクセスが前年の約70%の水準に、売上も115%まで回復しました。
2.One to Oneマーケティング強化:ライフイベント×時間軸で“寄り添うCRM”へ
リンベルでは次に、「結婚→妊娠→出産」といったライフイベントの連続性と、日付・時期データをキーに、最適なタイミングでギフト情報を届ける取り組みを行いました。
この取り組みでは、単なる販促ではなく、「ギフトの選び方」「マナー」などユーザーが求める情報を提供し関係性を深め、自然な形で購買へつなげることが重要です。顧客データや受注データ、アンケートデータを蓄積し、CRMツールを活用しながらメール配信やマイページに案内を表示するなどの施策を進めました。
3.ブランディング強化:狙うのは「指名検索」の増加
リンベルのInstagramやXでは、単に商品を並べるのではなく、「誰が、いつ、どんな気持ちで贈るか」といったシーンやストーリーの発信を重視しています。
また、フォロワー数よりもエンゲージメントを重視しています。フォロワー増を主な目的にすると、施策がキャンペーンや広告に寄りやすく、本質的な改善につながりにくいためです。
ブランディング強化を行った結果、指名検索数が前年比で10〜15%程度増加し、エンゲージメントが進むことで、ECだけでなくリアル店舗やモールでもよい反応を得ることができました。
リンベルは全社的に「上質」をキーワードに掲げ、価値ある情報を提供し続けることを重視しています。その上で「選ばれ、さらに選ばれ続ける」ため、次の4つの取り組みを行っています。
・ギフト特化SNS、オウンドメディア
・ブランドコラボレーション(出版社、ディズニーなど)
・百貨店を中心としたリアル店舗(ギフトブティック)
・オリジナルギフト開発(「日本の極み」「山形の極み」など)
なかでも、オリジナルギフトとして開発したグルメカタログ「日本の極み」は、味だけでなく生産者の想いを届けるための独自基準(極み基準)を設け、厳選した食品を掲載しています。2017年からスタートし、「山形の極み」もあわせ2,000点以上の商品を開発してきました。
昨年、リンベルの新たな挑戦として、贈る側が商品を自由に組み合わせてデジタルカタログを作成し、そのURLをLINEやメールで相手に送れるデジタル・ソーシャルギフトサービス「Gift List」を立ち上げました。従来の“返礼中心”のギフト需要を、日常の「ありがとう」や「おめでとう」へ広げる狙いがあります。
「Gift List」誕生の背景には、SNSの普及やDX化による「ソーシャルギフト」の拡大で、住所を知らなくても手軽にギフトを送りたい、といったニーズや、音楽サブスクリプションの「プレイリスト」をシェアするWebならではの感覚を、ギフトに持ち込む発想があります。
リンベルでは、Gift Listを「ギフト文化を置き換える」のではなく、新市場へのチャレンジとして位置づけ、ギフトがより行き交い、想いが深まる社会を目指すビジョンを掲げています。
さらに、リンベルではユーザーの体験価値の向上のため、ECサイトの改善にも取り組んでいます。特に検索機能では、検索結果の表示速度や、ギフト商材特有の検索に対応できていないという課題がありました。ECサイトの体験価値を上げるには、用途や好みなど複数軸を掛け合わせた“ギフトならではの検索”が必要という結論に至り、検索機能を強化するため、ジーニーの提供する「GENIEE SEARCH for EC」を導入しました。
GENIEE SEARCH for EC導入により、リンベルのECサイトでは、検索窓に候補語と商品画像を表示する画像つきサジェスト機能のほか、ギフトならではの条件による商品の絞り込みや並び替え機能を実装しています。


また、オウンドメディア「ギフトコンシェルジュ」でも検索導線を活用し、コンテンツ閲覧からギフト選定までのスムーズな動線設計を実現しました。

検索体験の改善では離脱につながる「0件ヒット(検索結果0件)率」の抑制が重要です。GENIEE SEARCH for ECでは、管理画面で検索キーワードを分析することで、ユーザーの検索時のつまづきを解消し「欲しい商品が見つからず離脱する」リスクを下げられます。
その結果、各セッションにおいて検索利用者とCVRの高い相関が確認でき、検索体験が成果に直結することが示されています。
・全ユーザー:検索利用者はCVRが約5.9倍(サイト全体比)
・新規ユーザー:検索利用者は11.2倍(サイト全体比)
・リピーター:検索利用者は4.3倍(サイト全体比)
・検索利用者は全セッションの約1%と少数だが、売上の約10%を創出
・平均セッション時間、ページ数、PVも全セッションと比較し約4倍
リンベルは、ギフトを「贈る人」と「もらう人」双方のデータを取得できるギフトにおけるデータの特性に着目し、独自のデータベースを構築しています。今後は、ギフト特化のプラットフォームの実現を目指しています。
ジーニーでは、検索履歴・閲覧行動をリアルタイムに解析し、レコメンドやAIによるハッシュタグの自動生成・表示、双方向データ活用、贈り忘れ通知などを通じて、ECサイト運営企業に向けたOne to Oneマーケティング支援を提供していきます。
AIの台頭とSNSの多様化により、ECサイトでも従来の“全体最適”から、顧客一人ひとりに合わせた“個人最適(One to Oneマーケティング)”への転換が重要になっています。
リンベルは、オウンドメディア・CRM・ブランディングを連動させながら、検索・回遊・提案といった体験を磨くことで顧客接点のアップデートを進めています。ジーニーでは、サイト内検索技術を基盤とした提案を通じて、その取り組みを支援しています。

リンベル株式会社について
リンベルは1987年創業、カタログギフトの仕組みを開発したパイオニア企業です。売上は業界トップシェアの948億円、40,000点以上の商品を取り扱い、ギフトの企画開発から物流、アフターフォローまで一気通貫の体制を構築しています。
GENIEE SEARCH編集部
(X:@BST_hoshiko)
ECサイトや企業サイトにおける快適なユーザ体験を実現するための導線改善方法から、ECマーケティングの手法まで幅広く情報を発信しています。
企業サイトやECサイトにおけるブランディング向上やUX改善につながる情報を発信。主にセミナー・SNS・メルマガ・プレスリリース等の企画運営を担当。